AWS入門ブログリレー2024〜Amazon WorkSpaces Family編〜
当エントリは弊社AWS事業本部による『AWS 入門ブログリレー 2024』の5日目のエントリです。
このブログリレーの企画は、普段 AWS サービスについて最新のネタ・深い/細かいテーマを主に書き連ねてきたメンバーの手によって、 今一度初心に返って、基本的な部分を見つめ直してみよう、解説してみようというコンセプトが含まれています。
AWS をこれから学ぼう!という方にとっては文字通りの入門記事として、またすでに AWS を活用されている方にとっても AWS サービスの再発見や 2024 年のサービスアップデートのキャッチアップの場となればと考えておりますので、ぜひ最後までお付合い頂ければ幸いです。
では、さっそくいってみましょう。今回のテーマは『Amazon WorkSpaces Family』です。
Amazon WorkSpaces Family
Amazon WorkSpaces FamilyはAmazon WorkSpacesをはじめとした関連サービスの総称となります。
2024年3月時点で
- Amazon WorkSpaces
- Amazon WorkSpaces Web (現 Amazon WorkSpaces Secure Browser)
- Amazon WorkSpaces Core
- Amazon WorkSpaces Thin Client
がファミリーに含まれるサービスとなります。
本記事ではAmazon WorkSpacesから順に解説していきます。
Amazon WorkSpaces
まずは基本となるAmazon WorkSpacesから。
Amazon WorkSpacesは『すべてのワーカーに対応した包括的かつ完全永続型の仮想デスクトップ』を謳う、AWS管理の仮想デスクトップ(VDI)サービスです。
利用者はWorkSpaceと呼ばれる仮想マシン環境を占有してデスクトップを利用できます。
インフラ基盤
仮想デスクトップのためのインフラ基盤はAWSがフルマネージドで管理しており、利用者は仮想デスクトップの利用に注力できます。
利用者が最低限用意しておく必要があるのは
- VPCと2つのAZに分かれた2つのサブネット
- このサブネット上に各WorkSpaceが配置されるイメージです
- 認証のためのActive Directory環境
- Amazon WorkSpacesは認証にActive Directoryを使うのが基本です
となります。
ユーザー認証にActive Directoryが必須であり、AWSのディレクトリサービス(Simple ADおよびAWS Managed Microsoft AD)を使うかAD Connector経由でセルフマネージドなディレクトリを使うことも可能です。
一例として簡単な構成例を紹介します。
利用者が用意したVPC内の2サブネットにAmazon WorkSpacesとAWS Managed Microsoft ADを用意し環境を構築します。
利用者はクライアントPCにインストールしたWorkSpaces Clientから各WorkSpaceに接続します。
加えてVPCとオンプレミス環境をDirect ConnectやSite-to-Site VPNで接続しておけば各WorkSpaceから企業内リソースにアクセス可能です。
利用可能なクライアント環境
Amazon WorkSpacesは以下のクライアント環境から利用可能です。
- Windows
- macOS
- Linux
- iPad
- Android/Chromebook
- Fire Tablet
基本的には各OS毎で専用のクライアントアプリケーションを使いますが、WEBブラウザから利用することも可能となっています。
アプリケーションのダウンロードはこちらから可能です。
利用可能なOSやソフトウェア
WorkSpace環境で使えるOSは以下の通りです。
- Windows Server (Desktop Experience)
- Windows Server 2016
- Windows Server 2019
- Windows Server 2022
- [BYOLのみ] Windows Client
- Windows 10 (リリース、エディションに制限あり)
- Windows 11 (リリース、エディションに制限あり)
- Amazon Linux
- Amazon Linux 2
- Ubuntu Desktop
- Ubuntu 22.04
Microsoftライセンス上の制限によりWindows環境は原則Windows Serverとなります。
Windows 11などのクライアントOSは占有ホスト環境にBYOLする場合のみ利用可能であり、占有ホストを使うには最低100 WorkSpaceの利用[1]を確約する必要があるのでご注意ください。
また、Windows環境においてはLTSC版Microsoft Officeのバンドルも可能となっています。
Amazon WorkSpacesはAWSでMicrosoft Officeを合法的に使えるほぼ唯一の方法です。
利用可能リージョン
本日時点でAmazon WorkSpacesを利用可能なリージョンは
- バージニア北部
- オレゴン
- ムンバイ
- ソウル
- シンガポール
- シドニー
- 東京
- カナダ
- フランクフルト
- アイルランド
- ロンドン
- サンパウロ
- ケープタウン
- テルアビブ
- GovCloud (US-West)
- GovCloud (US-East)
となります。
残念ながら大阪リージョンは非対応です。
また、リージョン内のすべてのAZで利用可能なわけでは無く、例えば東京リージョンだとapne1-az1
とapne1-az4
の2AZのみサポートされています。
Amazon WorkSpaces Web (現 Amazon WorkSpaces Secure Browser)
Amazon WorkSpaces Webは2021年のre:Invent 2021で発表され新たに追加されたサービスです。
WorkSpacesの名を冠していますが通常のVDIとは少し毛色が異なり、利用者は仮想マシン環境を占有せずに環境内のWEBブラウザ(Chrome)のみ利用可能となっています。
このブラウザから社内WEBアプリケーションやSaaSアプリケーションを利用するのが主な用途になります。
こちらも一例として簡単な構成例を紹介します。
ぱっと見でAmazon WorkSpacesと似た感じになっていますが、利用者はWEBブラウザからAmazon WorkSpaces Webのサービス(ポータル)に接続します。
ポータルに接続するとその都度仮想マシン環境が割り当てられ内部のWEBブラウザ(Chrome)が起動します。
予めVPCとオンプレミス環境をDirect ConnectやSite-to-Site VPNで接続しておけば内部のブラウザは社内ネットワークにアクセス可能になります。
利用可能な認証基盤
Amazon WorkSpaces WebはAWS IAM Identity Center等のSAML 2.0をサポートするIdPを認証基盤にすることができます。
本日時点においては
- AWS IAM Identity Center
- Microsoft Entra ID (旧Azure AD)
- Okta
- OneLogin
- Ping Identity
が標準としてサポートされています。
Amazon WorkSpacesと異なり通常のActive Directoryは利用できません。
利用可能なクライアント環境
Amazon WorkSpaces Webは内部的にNICE DCVの技術を利用しており以下のブラウザの最新バージョンでの利用がサポートされています。
- Google Chrome
- Mozilla Firefox
- Microsoft Edge
- Apple Safari
より詳細な条件についてはこちらのドキュメントを参照してください。
利用可能なOSやソフトウェア
先述の通りAmazon WorkSpaces Webは仮想マシン環境内のWEBブラウザ(Chrome)のみ利用可能です。
利用者がOSなどを選ぶことはできません。
ちなみにですが、仮想マシン環境のOSはAmazon Linux (おそらくAmazon Linux 2)となります。
利用可能リージョン
本日時点でAmazon WorkSpaces Webを利用可能なリージョンは
- バージニア北部
- オレゴン
- ムンバイ
- シンガポール
- シドニー
- 東京
- カナダ
- フランクフルト
- アイルランド
- ロンドン
となります。
こちらも残念ながら大阪リージョンは非対応です。
通常のAmazon WorkSpaces同様に利用可能AZは制限されていますが、東京リージョンでは全AZ[2]サポートされています。
余談 : Amazon WorkSpaces WebはAmazon WorkLinkの後継
以前からAmazon WorkSpaces Webと同様の目的を持つサービスとしてAmazon WorkLinkがありました。
- https://aws.amazon.com/worklink/
- 現在はAmazon WorkSpaces Webのページにリダイレクトされる
Amazon WorkLinkはAmazon WorkSpaces Webが登場した翌年の2022年4月20日ごろにアクセス不可となりひっそりとサービス終了しています。
現在は公式ページもAmazon WorkSpaces Webにリダイレクトされる様になっており、また、Amazon WorkLinkリリース当時のブログにも
Update: As of November 30, 2021, AWS recommends Amazon WorkSpaces Web to deliver secure browser access for web-based workloads.
とAmazon WorkSpaces Webへの移行を推奨する記述が追記されています。
追記 : サービス名が改名されました
2024年5月にAmazon WorkSpaces Webのサービス名が「 Amazon WorkSpaces Secure Browser 」に改名されました。
ここまでの解説を踏まえるとこの改名がより実体に近いものを表現する様になったことがお分かりいただけるでしょう。
記事中の表記は公開時点の「Amazon WorkSpaces Web」を残した形にしていますのでご了承ください。
Amazon WorkSpaces Core
続けて2022年9月末にAmazon WorkSpaces Coreが発表されました。
こちらは他社VDIソフトでAmazon WorkSpacesのインフラ基盤を利用するために「コア機能」だけを提供するサービスとなります。
具体的には次の様な仕組みになっており、利用者にとっては他社VDIソフトウェアを使いつつAWSのマネージドなインフラを利用できる点がメリットとなります。
- VDIソフトウェアは他社製品を使用する
- VDIの管理基盤は自前で用意するか他社DaaSサービスを利用する
- 多くの場合EC2やRDS等でVDI管理基盤を構築
- 管理基盤がオンプレミスにあっても構わない
- 仮想マシン環境がAmazon WorkSpacesから提供される
- 他社VDI管理基盤がAmazon WorkSpaces CoreのAPIを実行
利用可能な他社ソフトウェア・サービス
本日時点で利用可能な他社VDIソフトウェアは以下の通りです。
- VMware Horizon 8 (VMware)
- Workspot Cloud PC (WorkSpot)
- Leostream Remote Desktop Access Platform (Leostream)
- [プレビュー] Citrix DaaS (Citrix)
たとえばVMware Horizon 8の場合下図の様な構成となり、Horizonの管理基盤となるUAG, Connection Server, Cloud Connector, RDS, Directory Serviceは自前で用意しつつ仮想マシン環境をAmazon WorkSpaces Coreから提供する形になります。
(https://aws.amazon.com/jp/blogs/news/extending-vmware-horizon-to-amazon-workspaces/
より引用)
本記事は入門なのでこれ以上は語りませんが、上図でサービスの雰囲気は理解いただけるでしょう。
Horizon以外のソフトウェアについては以下の記事やドキュメントが参考になります。
- Workspot Cloud PC: How to Set Up Workspot Cloud PCs and Amazon WorkSpaces Core
- Leostream: Quick Start Guide: AWS + Leostream Proof-of-Concept Architecture
- Citrix DaaS: Citrix DaaS for Amazon WorkSpaces Core(Technical Preview)
利用可能リージョン
本日時点でAmazon WorkSpaces Coreを利用可能なリージョンは、Amazon WorkSpacesとほぼ同様に
- バージニア北部
- オレゴン
- ムンバイ
- ソウル
- シンガポール
- シドニー
- 東京
- カナダ
- フランクフルト
- アイルランド
- ロンドン
- サンパウロ
- テルアビブ
- GovCloud (US-West)
- GovCloud (US-East)
となります。
理由は不明ですがケープタウンだけは非サポートとなっています。
Amazon WorkSpaces Thin Client
最後に2023年のre:Invent 2023でAmazon WorkSpaces Thin Clientが発表されました。
こちらは名前の通りAWSが販売を開始したシンクライアント端末とデバイス管理のためのサービスとなります。
端末は下図の通りFire TV Cubeを流用したものとなっており、ハードウェアスペックもHDMI INポートが塞がれている点以外は同一となります。
より詳細なスペックについてはこちらで確認できます。
端末の購入はAmazon.com(米国)から行う形となっており、残念ながら日本への発送はできません。
「今年の早いうちに米国以外でも販売する」と言われているもののまだ具体的な日程は決まっていません。
利用可能サービス
Amazon WorkSpaces Thin Clientのシンクライアント端末では
- Amazon WorkSpaces
- Amazon WorkSPaces Web (現 Amazon WorkSpaces Secure Browser)
- Amazon AppStream 2.0
の3サービス利用可能です。
Amazon WorkSpacesだけでなくAmazon AppStream 2.0が含まれているのが特徴的です。
利用可能リージョン
本日時点でAmazon WorkSpaces Thin Clientを利用可能なリージョンは
- バージニア北部
- オレゴン
- ムンバイ
- カナダ
- フランクフルト
- アイルランド
- ロンドン
となっています。
残念ながら東京リージョンと大阪リージョンは非サポートです。
現時点では端末の購入もできないため日本においてAmazon WorkSpaces Thin Clientを試すのはほぼ不可能といった状況です。
参考資料
各サービスの詳細を学ぶための参考資料を補足しておきます。
- Amazon WorkSpaces
- Amazon WorkSpaces Web (現 Amazon WorkSpaces Secure Browser)
- Amazon WorkSpaces Core
- Amazon WorkSpaces Thin Client
終わりに
以上、『AWS 入門ブログリレー 2024』の5日目のエントリ『Amazon WorkSpaces Family』編でした。
次回、3/30は弊社おつまみによる「Amazon SES編」の予定です!